第3章 砂のお城
「花」
重ねるだけだった手が、包み込むようにぎゅって、握って。
一瞬だけ、ビクン、と、体が震えた。
「前に進もう、花」
「まえ、に?」
「俺が、嫌い?」
「……じゃ、ない」
「よかった」
「………」
「付き合おうか花」
「ぇ」
「だんだんに、好きになってくれればいいから。今すぐ俺を好きになれなんて言わないからさ、嫌いじゃないなら、付き合ってみない?」
……ゆうちゃん、と。
付き合う?
「……ゆうちゃ…、ぇと」
「いいよもう、ゆうちゃん、で」
「……いいの?それで」
「俺はいいよ。俺はずっと前から、花が好きだったから」
「!!」
「花にもバレちゃってるみたいだしさ、もう隠しとくメリットもないからね。」
絶対この人、モテるよ。
いや。
ずっと人気者だったけど。
モテる意味、わかる。
嘘がない。
相手を不快にさせない言葉選び。
自然とリードしてくれる、包容力。
「………」
変われるかな。
泣いてばっかの日々も。
彼を思って眠れない日々をただ過ごすのも。
正面疲れたの。
甘えても、いい?
その優しさを、花は利用するよ?
ひとりでいたくない。
ぬくもりが欲しい。
ただそれだけの理由で。
花は好きでもないあなたを、あなたの気持ちを。
利用するよ?
「………ぇと、あの、よろしくお願い、します?」
軽く会釈ついでに上目遣いに見上げれば。
なんで疑問系?なんて、爽やかに笑いながら。
「よろしくお願い、されました」
って、笑顔で私に頭を下げたんだ。