第3章 砂のお城
利用、してるつもりだった。
寂しさを紛らわせてくれるなら、誰でもよかったのかも。
だけど。
だけどね?
ゆうちゃんとの時間は楽しくて。
『お兄ちゃん』でも、『友達』でもなくて。
いつのまにか『彼氏』として。
彼の存在が大きくなってったんだよ。
花を大切にしてくれる。
誰よりも。
何よりも。
私だけを、見てくれる。
愛してくれる。
花を一番に、優先してくれる。
これが愛させる幸せってやつなのかな。
共に夜を過ごした日は、朝になっても消えないぬくもりがある。
太陽の下、堂々と胸を張ってデートできる。
何よりも。
澪に、友達に。
非難されない、付き合いができる。
それが一番、嬉しかった。
「どーしたの?」
「なんでもない」
「なに、花」
「幸せだなぁ、って」
すごくすごく、幸せだなぁ、って。
しーちゃんを想って泣く日々も。
自分に嘘を付き続けて耐えた日も。
今では遠い昔の様。
「好き、ゆうちゃん」
「花」
「大好き、優生」
体を繋げる喜びも。
愛される喜びも。
全て彼が教えてくれた。
幸せだよ。
たとえそれが。
水の上に立つ、砂のお城だったとしても。
私はこの時、確かに幸せだったんだよ。