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依存愛-彼と過ごした3000日-

第3章 砂のお城


ちがう。
違うの。


悲しいんじゃない。

私、嬉しかったんだよ。
まだ、花はしーちゃんに愛してもらえるかも。
必要とされる、かも。


そう思ったら、嬉しかったの。


だからゆうちゃん。
あなたに優しくしてもらう資格なんて、花にはないんだよ。













「花」

「澪」

「今日も綾瀬さん、来るの?」
「うん」
「そっかぁ、そっかそっか」
「何?」


「んーん、なんでもない」


お先ー、なんて。
にやにやしながら更衣室を後にする澪の背中にため息を吐き出して。
澪と同じように制服に着替える。


今日も、また一日が始まる。









あれから。
ゆうちゃんの部屋で、わんわん泣きわめいたあの日から。
2ヶ月。





「俺は、いつだって花の味方だよ」

大学生になって、大人になって。
社会にでて。
『恋』をした。
生まれてはじめて、狂おしいくらいに他人を愛した。
これが恋じゃなくて、依存だとしても。
花は確かに彼を愛してる。


愛してる。



そう、一気に泣きわめく花の言葉を黙って聞いていたゆうちゃんは、最後に一言そう、言った。




そう、言ってくれた。




純粋に、嬉しかったんだ。
そう言って抱き締めてくれた、ゆうちゃんの温もりが暖かくて。
そのままそれにすがった。

だけど。

その言葉を彼の優しさだと受け止めることで、彼の気持ちをごまかした。


誤魔化し、続けたの。



しーちゃんのいなくなった世界は、花には真っ白に見えて。
眠れない夜をいくつ過ごしても、毎日毎日同じように朝は光を連れてきちゃうし。
仕事はいつもどーりにまわる。

過ぎた時間は元には戻らない。
そんなことわかってる。

わかってるけど。


誰かにすがらないと立っていられなくて。
誰かのぬくもりにすがらないと凍えそうで。


過去に戻れないなら。

今このときを生きるために、必死で生きるために。
誰かにすがっても、いいかな。


そんな自分勝手な言い訳をして。

私は、『ゆうちゃん』の優しさを、『好意』を利用したんだ。







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