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依存愛-彼と過ごした3000日-

第3章 砂のお城


「あーあ、アイスぐっちゃぐちゃ。悪かったな」


『ゆうちゃん』は。
私を部屋にあげるなりそう言って、私からコンビニの袋を取り上げて。
小さなアイスを代わりに、持ってきてくれた。

「チョコじゃなくて悪いけど」

あっち、とシャツをパタパタさせながらエアコンのスイッチをオン。

「この暑い中チョコアイスなんて買ってくんなよ、溶けるだろ、どー考えたって」

「………考えなかった、それ」

「花らしーわ」


目の前で楽しそうに笑うのは。
中学生の頃からのおとなりさん。
3つ上のお兄ちゃん、だ。


綾瀬 優生(ゆう)。


まだまだ好きとか、わかってなかったけど。
高校生のあの頃は、彼に対して好意、は、持っていた。
もしかしたら『恋愛』とかの類いの好意、だったのかもしれないけど、今となってはもうそれすらも不明。


「変わってないね、ゆうちゃん」


彼に最後にあったのは。
まだ16歳になったばかりの高校1年生の春休み。
彼は地元から離れた遠くの大学へ進学したから。


「花は、キレイになったね」



「え」
「キレイになったよ、花」



まっすぐに見つめられる視線に。
一瞬だけ、ドキドキした。


「『女』の顔、するようになった」



ーーーードクン。

て。
嫌な音を立てて心臓が、軋んだ。


『キスの仕方も、男に媚びる方法も。全部、俺が教えた。こんな風に女の顔ができるまで、俺が育てたんだよ』


「花?」


『花は、俺が女にしたんだよ』







女の、顔?
しーちゃん以外にも、花はそんな顔、してるの?
しーちゃんが好きだって言ってくれた、その表情。
花は今でもまだ、しーちゃんが好きだって言ってくれた、花のままなの?


「花?ごめん、俺地雷踏んだ?ごめん」
「ちが………っ」


急に泣き出した私の間近まで移動すると、ゆうちゃんは両手で涙を優しく拭ってくれた。

「ゆう、ちゃ………」

「花が辛いとき、そばにいてやれなくてごめん」


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