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依存愛-彼と過ごした3000日-

第3章 砂のお城


玄関前に立ち尽くす澪をリビングまで誘導して。
とりあえず濃いブラックコーヒーをテーブルへ。


夜勤明けにわざわざ言いに来てくれたのはいいけど。
玄関開けたら第一声がそれ。
さすがに一瞬思考回路が反応遅れた。

「寝てくでしょ?」
「ねぇ花………」

「―――――――いいよ」


澪がまた何か言いかけるまえに、わざとそれに言葉をかぶせる。

「いいよ、『依存』でも。」
「花」




息もできないくらいに心臓を突き刺すこの痛みが。
胸を締め付けるこの気持ちの名前が。

『依存』。


それだってゆーならそれでいい。






「ごめん澪」



しーちゃんがいいの。
愛だとか恋だとか、どーでもいい。
しーちゃんがいないと、だめなの。
毎日毎日、気付けば携帯を手にしてる。
いつかしーちゃんに連絡しちゃいそうで、違う、連絡したくて。
おかしくなる。
毎日毎日、生きていくのが、呼吸をするのが辛いよ。




「記憶をなくすには、どーすればいい?」



21年間築き上げてきた全てを失っても。
それでも。
しーちゃんを忘れられるなら、忘れたい。
自分が誰かわからなくても。



「忘れたいの、しーちゃんとの出会いを、記憶を消してよ、澪」



もう、枯れ果てたはずの涙も。
生きてる限り溢れてくる。
毎日毎日、彼を思って泣く日々も、くだらないことしか思い浮かばない思考も。
何もかもが嫌だ。


「花」
「…………………っ」


澪にすがっても仕方ないことくらいわかってる。
記憶を消すなんてこと無理なことも。


だけど。


もう嫌だ。



もう、嫌。



「花、来週連休だよね?たまには実家でゆっくりしてきなよ」








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