第1章 夜暁
結城 修。
好きで好きで、なにもかもを犠牲にしてもいいくらいに。
大好きな、彼の、名前。
彼に愛されるなら。
何を犠牲にしたってかまわない。
彼が、私だけを愛してくれるならば。
「また、忘れるよ」
指輪をはずそうとするしーちゃんに預けたままになっていた視線は。
すぐに、苦笑する彼に飲み込まれた。
「だから、言ってることと顔が合ってないから」
「……………そんなの」
仕方ないじゃない。
「そんなに好き?」
わかってるくせに。
私が、どれだけあなたを好きでいるのか。
おかしくなるくらいに。
あなたしか見てないの、知ってるくせに。
挑戦的に細められた瞳は、私からの答えを請う。
残酷で辛い現実を、わからせるように。
「花?」
「……………好きだよ」
これ以外答えの選択肢がないの、知ってるくせに。
彼はいつも言わせるんだ。
「知ってる」
笑いながらほっぺたに片手を滑らせるそのごつごつとした手に自分の手を重ねて。
「指輪、忘れないでね」
そう、微笑んだ。