第1章 馴れ初め
意を決した後の流れはとてもサクサクしたもので。
私の傷の処置をと申し出てくれたのをこれぐらいなら自分で出来るので大丈夫と断り、帰って頂いた。
私の傷は顔のキズと多少の擦り傷、叩き付けられた衝撃でできたであろう服の下に隠れた打撲がメインだ。
流石に交際してもいない殿方の目の前で服を脱ぐ、なんてできたものではない。
クラウスさんは少し渋ってはいたが、ここで押し問答をし長居をする方が私の体に良くないと気付いたのであろう。
私を気遣う言葉を一言、二言告げようやく去っていった。
「痛かったなぁ…」
赤毛の男を見送った後、店に鍵をかけ、店内の奥にある住居スペースに着くと服を脱ぎ体をチェックする。
強盗事件の際に叩き付けられた衝撃でできた大きめな痣が左脇腹から背中にかけて、受け身をとろうとした時に出来た手の擦り傷、あと腕の裂傷。
まあ腕の裂傷は事件のせいではないけど。
体のチェックが終わったあとは顔の怪我も確認する。
頬のには裂いたような傷が一筋。
顔の傷は分かりやすいから嫌なんだけどな。
傷口を消毒し絆創膏をぺっと貼る。処置はこれでいいだろう。
顔に何日も怪我をしています!とばかりに絆創膏を貼るのは販売業としても嫌だが、クラウスさんは毎日来られるし仕方ない。
他の箇所は服で隠すことが出来て良かった。
たった一日でここまで怪我をするなんて、恐ろしい街だ。命が残っただけ奇跡的と言っても良いのかもしれない。
明日は平穏な日でありますように、願いを込めながら私は眠りにつくのであった。