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エメラルドグリーンに溶けて

第2章 変化


どうしてこんな状況になっているのか。
ギルベルトさんの運転する車に揺られながら心の中で独りごちる。
広くゆったりとした車内であるはずなのに、ぴったりと触れてしまいそうなくらい近くに座るクラウスさんは何がしたいのか。

ちらっと彼を見上げると目があった。


「怪我の具合はどうだろうか、ハヅキ」

「もう全て治りました。あれくらいの傷なら数日経てば治るので大丈夫です」

「ならば良かった。私の傷で迷惑をかけてすまない」

「私が勝手にやったことですから…。むしろこちらこそすみません。先日はご迷惑をかけて」

「私こそ気付くのが遅く怠慢であった。申し訳ない」

「いやいや、クラウスさんは何も悪くありません」

「しかし……」


ぺこっと頭を下げるとクラウスさんも頭を下げる。
彼が謝ることなんてないのに。
それを遮るためにまた私が謝りると更にクラウスさんが謝り…、ぺこぺこと交互に謝るのが止まらない。

なんだかこの謝りあうのが止まらないのが可笑しくて、思わず笑いがこぼれた。
そんな私を見て、クラウスさんもふっと笑みを見せた。

お互いに顔を見合わせて笑いが溢れ、謝罪合戦はやっと幕を閉じた。


◇◇◇


そんなこんなしてる間にギルベルトさんの運転してる車はあっという間に目的地の納品先に到着し、商品は無事に納品することができた。
一人で持てると言うのにクラウスさんは素早く荷を掴むと私に盗られぬようにするりと歩き出してしまう。


「クラウスさん、自分で持つので大丈夫ですから」

「私が持ちたくて勝手にしていることだ。気にしないでくれたまえ」

「そうは言われましても、私が持つべき荷物です。送ってまで頂いたのにこれ以上お手を煩わせる訳にはいきまん!」


なんとか荷物を取り返そうと少しだけ語尾を強くして主張をする。
その声が効いたのか、ようやく彼をその長いコンパスを止め私を見下ろした。


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