第1章 馴れ初め
「私も前に言いましたが、思わず体が動いてしまったんです。こればかりは、どうにも」
「うむ…、だが…」
実は私は前にも彼を庇おうとしたことがある。
それはクラウス・V・ラインヘルツと初めて出逢った時のことだ。
なにやら傷を負っていた彼がヤンキーみたいな異界人に絡まれているところを発見、なんやかんやして助けたのだ。…大した話ではないので、まあ詳しい話は追々。
その時も彼は今と同じようなことを述べていたが、考えなくても体が飛び出してしまったのだから許して欲しい。
まだ何か言いたげな彼を制するように、ミスタ・ラインヘルツを見上げ苦笑すると、彼は何故か頬を赤くしながら、ようやくその口を閉じた。
「クラウス、もうすぐ彼らがくるから大丈夫だろう。戻るぞ」
「うむ。ハヅキ、立てるかね?」
「すみません、腰が抜けていて…。私のことは気にしなくていいので行ってくださ、ーーわっ!」
「スティーブン、私はハヅキを送り届ける。先に戻っていてくれたまえ」
「ちょ、おいクラウス!……ったく」
スティーブンという男がミスタ・ラインヘルツに声をかけるも彼は聞いていなかった。
私を所謂お姫様だっこというので抱えあげると外へ歩き始めたのだった。
え、ちょっと待って。なんで私はミスタ・ラインヘルツに抱っこされているの!恥ずかしいからやめて!
パニックでミスタ・ラインヘルツの腕から降りようと暴れるが、彼は小動物がじゃれているかのようにものともせず歩き続けるのであった。