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エメラルドグリーンに溶けて

第1章 馴れ初め


「無事かね?!ハヅキ!」

「ミスタ…ラインヘルツ……」


突如上半身とさよならした強盗集団の一人を見て唖然としていると、大きな影が降り注ぐ。
見上げるとそこには、エメラルドの瞳を鋭く輝かせたクラウス・V・ラインヘルツの姿があった。

彼は異界人によってボロボロになってしまった私の身体を確認すると、怒りに身を震わせたように見えた。
どうして彼がここにいるのだろう。
未だに呆然とする私に目線を合わせるように、ミスタ・ラインヘルツは身を屈める。


「大丈夫かね、ハヅキ…」


彼の大きな手がまるで割れ物でも触るように、私の頬に添えられるとびりりと痛みが走る。
気付かなかったけど頬を怪我していたのだろうか、彼の手を意識した途端に痛みと熱を孕んだ気がした。

思わず添えられた手とは逆方向に顔を反らすと、ミスタ・ラインヘルツの背中越しに残りの強盗集団たちが銃口をこちらに向けているのが視界に入った。


「っ!危ない!!」

「ーーエスメラルダ式血凍道 絶対零度の地平!」


思わず軋む身体を動かしミスタ・ラインヘルツを庇おうとした瞬間、男の声と共に強盗集団たちは瞬時に氷漬けになった。
ひんやりとした空気が静まり返った部屋に広がる。

強盗集団たちの身体は先程何かを叫んでいた男の靴から生えた氷によりピクリとも動かない。
男がミスタ・ラインヘルツに大丈夫かと問い掛けるような目配せをすると、彼はうむ、と頷いているのだった。どうやらミスタ・ラインヘルツのお知り合いらしい。

助かったんだ…。
死を覚悟していたシチュエーションからの脱却に力が抜け、へなりと腰が抜ける。
ミスタ・ラインヘルツが背中を支えてくれたおかげでなんとか地面に倒れることはなかった。


「君はとても勇敢で美しかった。だが、前にも言ったが、私を庇うよりも自分の身を守ることを優先して欲しい」


彼はエメラルドの瞳をどうか、と請うかのように揺らしながら私の顔を覗き混む。
背中を支えて貰っているままだからすっごく距離が近い。
あまりの近さに脈が激しく跳ねるが、ミスタ・ラインヘルツは気付かれていないようで良かった。

……美しいとは、なんでだ。

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