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エメラルドグリーンに溶けて

第2章 変化


「スティーブン」

「取り込み中すまない。クラウスを借りてもいいかな、お嬢さん」


頬に傷のあるスティーブンという男性が部屋に入ってくると、彼はクラウスさんの先のベッドにいる私を見つけるとにっこりと爽やかに笑い掛けてきた。


「どうかしたのかね、スティーブン」

「例の奴が現れたんだよ、クラウス。行動するなら今がチャンスだ」

「わかった。申し訳ないハヅキ、話の途中だが行かねばならない」

「いえ、私のことなど気になさらずに行ってください」

「ありがとう。帰りはギルベルトに送らせよう」


慌しくクラウスさんは言うとスティーブンという男性と共に部屋を出て行った。
ばたばたとした足音が離れていくのが聞こえ、しーんとした静寂が部屋を包む。
一人きりになった部屋にほっと一息ついた。

クラウスさんからの質問が遮られてよかった。
安心感で固まっていた体から力が抜け、背もたれにしていたやわらかい枕にもたれると大きく息を吐いた。

どうして身を犠牲にしてまで人の怪我を治すのか、なんて。


「――贖罪のために、利用しているだけに過ぎないですよ」


呟いた言葉には自嘲的な笑いと共に、真っ白な天井に溶けていった。









しばらくすると、ギルベルトさんがやってきて私を店まで送って頂いた。
セキュリティの為だと言われて部屋から出るときから目隠しをつけさせられたけど、いったい彼の会社はどういうところなんだろう。
謎が深まるばかりであった。



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