第2章 変化
「君の力はどういったものなのだろうか」
クラウスさんと約束を交わしたあと、彼は私の能力について訊ねてきた。
もう彼にバレてしまったので特に隠すものでもないし、クラウスさんの傷がどうやって私に移ったのかも気になるだろう。
身だしなみを整えベッド脇の椅子に戻ったクラウスさんに向き合いながら語りだす。
「私には高い治癒力があるそうです。その治癒力を、体液を媒介にして他者に与えることができるのが私の能力です。クラウスさんの傷を治したときも直接傷口に触れることでその能力を駆使することができました」
手の皮脂も体液にカウントされるみたいです、と手の平をクラウスさんに見せながら言う。
「治癒力を与える能力というのならば、どうして君は傷を受けているのだろうか?」
「皮脂だけでは傷を治すのには量が足りないからです。私の能力は体液の量に応じて与えられる治癒力も変動するのですが、その量が与えた治癒力に対し不足していると傷が私の体に移ってしまうみたいです」
「ではハヅキは傷が君の体に移行するのを理解した上で、私に能力を使ったということか」
「…そうなりますね」
「君は何故、自分の身を犠牲にしてまでそのようなことをするのだね」
クラウスさんの問いに思わず体が固まる。
なぜ、どうして、私がこんなことをしているのか。
自己犠牲も甚だしい行為はきっと彼には理解できぬ行動であるだろう。
なんでなんて、私には理由が一つしかない。
それは人のために何かがしたいとか、助けてあげたいだとか、そんな高尚な理由ではない。
「それ、は」
口を開きかけた時、部屋の扉が慌しいノックと同時に開かれた。