第2章 変化
彼の言いたいことはつまりこういうだ。
私に他者の傷を自身の体に移し替えることができる能力があるのでは、と。
クラウスさんは突如倒れた私を看病をしてくれた際に私の体の節々に見覚えのある傷があるとを知り、その私の傷と仲間からの情報や彼自身の体に本来あるはずの傷跡がないことに気付いたことでこの事実に辿り着いたのだろう。
おおよそこんな流れだろうか。
今更発覚の流れを考えたって意味もないのに、無駄にそんなことを考える。
クラウスさんの推測は正解である。
折角今まで隠してきたのに。
昨日の自分の失態のせいで呆気なくバレてしまったことに後悔をするが、時既に遅しだ。
「……クラウスさんの言うとおり、私の怪我は貴方が負っていた傷です」
「どうして私の傷が君の体にあるのかね」
「人の傷に直接触れることによって、私は他者の怪我を自分に移し替えることができるんです。すみません、気持ち悪いですよね。怪我とはいえ勝手に人の体から移し取るなんて」
「ハヅキが私の為にしてくれたことに不快に思うことなど断じてない」
謝る私にクラウスさんはきっぱりと答えた。
彼を騙して勝手なことをしていた私に嫌悪を抱いてもおかしくはないのに。
「ハヅキ、1つ約束をしてくれないだろうか」
「…なんでしょうか」
「私の傷を自分に移すなど、今後は二度としないで欲しい。私の代わりに君が痛みを負うなど、私は到底受け入れることはできない」
クラウスさんは私の手を両手で包み込むと、請うような瞳で私に言う。
そんな目をするなんて、ズルい。
私はそれに、はいと肯定することしか出来なかった。