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エメラルドグリーンに溶けて

第2章 変化


「ハヅキが倒れた時、私はある報告を受けた」


クラウスさんは手を固く握りしめたまま語りだす。


「昨日君に治療して貰った傷には遅効性の毒があり、負傷した構成員たちは少なからず毒に苛まれたようだ。心配しなくてもいい、軽微な毒で皆もう完治している」

「はあ…」

「受けた傷の量に応じて症状の重さも比例したという。だが不思議なことに、私は負傷していたにも関わらずその症状の気配が現れることはなかった」

「………」

「症状とは急な発熱による倦怠感や意識の混濁であったと聞く。――――ちょうど君に起きた症状に、よく似ている」


彼の言わんとすることに、息が止まりそうになる。
さながら蛇に睨まれた蛙のような気分だ。
張り詰めた緊迫感に目を反らすことすらできない。

それでも私は、簡単に肯定するわけにはいかない。
震えそうになる声を抑えながら振り絞るように誤魔化す。


「偶然、ですねぇ。私は仕事の疲れでも溜まっていたんですかね、あはは」

「ハヅキ、」


クラウスさんは椅子から立ち上がるとベッドに身を乗り上げた。
ぎしりと、彼の重みでベッドの軋む音がする。
彼の大きな影が私を覆いつくす。

彼は私の横に座るとガントレットボタンが外し袖を捲ると肌を曝け出した。
鍛えあげられた逞しく固そうな腕、古い傷跡が所々に残っているのが見える。


「単刀直入に尋ねよう。君のその怪我は、私が負っているべき傷であるのではないだろうか」


問い掛けるような口振りでクラウスさんは言うが、これは決して質問ではない。
確信を持って彼は、私が隠している真実を掴み取ろうとしているのだ。

エメラルドグリーンの瞳は私をまっすぐ捕らえて逃がさない。


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