第2章 変化
「ここはどこなんでしょう?」
私はクラウスさんに問いかけながら、サンドイッチを1つ口に含む。
ああ、このサンドイッチすごくおいしい。
思わず美味に頬を緩めると、それを見てクラウスさんがふっと笑みを溢した。
なんだか気恥ずかしくて、誤魔化すように飲んだ紅茶もこれまたすごく美味しい。
食事を用意してくれた際に一瞬だけ姿を見せた、クラウスさんの専属執事だというギルベルトさんという方に心の中で感謝する。
更にひと口サンドイッチを食べると、傍にある椅子に腰をかけ私を見ていた彼が口を開いた。
「ここは私の勤めるライブラにある、プライベートルームだ」
ライブラ?どこかで聞いたことがあるような名前だ。
確か噂話かなにかで…、思い出そうと頭を悩ませるがどうにもピンとこない。
それにしても、そのライブラという会社?でこんな大きなベッドを置ける個人部屋を持つなんて、クラウスさんはそれなりの地位がある人なのかな。
まあ専用執事がつくくらいの人だから、結構納得なんですけども。
でもなんで私がそんなところに?
疑問を顔に浮かべる私を見て彼は更に続ける。
「君は昨日、突如酷く高い発熱を意識を失ったので、医者に見せるためにライブラへ連れてきた。」
「!すみません、ご迷惑おかけしました」
「いや、ハヅキの変化に気付くことが出来なかった私の不徳の致すところだ。すまない」
「いやいやいや、クラウスさんが謝ることではないで
すよね?」
頭を下げるクラウスさんに驚き慌てる。
体調を管理しきれなかった私が悪いだけで、彼が謝る理由なんてどこにもない。
むしろ謝るのは私の方である筈だ。
「私はハヅキと共に居る時間が嬉しく浮かれていたのだ」
まるで懺悔するような、低く悔いた声で彼は言う。
膝の上に置かれた両手は白くなってしまうくらい、固く強く握りしめられていた。