第2章 変化
「ここ、どこ……?」
改めて今いる場所を確認すると、身に覚えのない部屋に私はいた。
大きなベッドに清潔な真っ白なシーツ、部屋にはいくつもの観葉植物と花たち。
誂えられた高級そうな調度品たちがこの部屋を高貴な場所に引き立てている。
シーツをめくり体を確認すると、覚えている服とは違い知らない患者着みたいな服を身に纏っており、そこから覗く手足には包帯が巻かれている。
どうしてこんな格好をしているんだろうか。
困惑が頭の中を駆け巡る。
まあとにかく一旦部屋から出てみよう。
ふんわりと体を包み込む気持ちの良いベッドから降りてドアノブに手をかけようとした時、扉が向こう側からがちゃりと、音を立てて開いた。
伸ばしかけた手もそのままに開かれた扉の先を見ると、そこにはエメラルドグリーンの瞳をわずかに見開かせ私を見下ろすクラウスさんがそこにいた。
「おはようハヅキ。もう熱は下がったかね」
「え?あ、はい。おはようございます」
「病み上がりは体調が崩れやすい。もう少し休み給え」
「わっ、ちょ、クラウスさん!?」
言うないなや、赤毛の男は突然私を抱き上げた。
予想しなかったクラウスさんの行動に驚きじたばたと抵抗をするも、そんなことはものともせず彼は片手で私を抱える。
暴れる私を諌めるように、彼は私の頬に手を添えるとエメラルドの瞳を細めた。
「泣いていたのかね」
「!」
武骨で大きな手が、壊れ物に触れるかのように優しく私の頬を撫でる。
その指先は何故か、水気を纏っていた。
バッと頬に触れるクラウスさんの手を払い、自分の手で隠すように頬を拭う。
なんで、涙なんか流しているんだ。
「あはは、寝汗でもかいちゃったんですかね」
「そうか」
クラウスさんは笑ってごまかす私にそれ以上踏み込むことなく短く返事をする。
彼は私を抱き上げたままベッドまで歩くと、ベッドの中で座らせるように枕で背凭れを作り私をそこにそっと降ろした。