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エメラルドグリーンに溶けて

第2章 変化


いやに体が暑い。
追い込まれていた壁際から戻り椅子に座りながら、熱を持ったままの体に戸惑う。
先ほどの壁ドンという恥ずかしい状況の緊張が続いているのだろうか。


「ハヅキ?具合でも悪いのかね?」

「へ!?あ、大丈夫です」

「ならよいのだが」


心配そうに私を伺うエメラルドの瞳にドキっと心臓が高鳴った。
…なんだ今のドキって。
思いがけずに高鳴った胸の鼓動に内心驚いたが、彼に悟られないように平静を保ち返事をした。


「ハヅキにはいつも治療をして貰い世話になった、ありがとう」

「いえいえ。これぐらい大したことでは」

「日ごろの礼として何かハヅキに贈らせて欲しい。ひとまず食事でもしながら、この件について話させては貰えないだろうか」

「滅相もない!そんなお礼を頂くようなことはしてません!」

「しかし……」


焦りながらクラウスさんの申し出を断っていると、彼の携帯に着信の音が鳴った。
彼はすまない、と一言断りを入れると電話に対応する。

助かった。彼に電話をかけてくれた見えぬ誰かにそっと感謝をする。
今話が中断しなかったら先ほどの連絡先の件のように、YESというまで彼は解放してくれないような気がするのだ。
意外と頑固者なのだろうか、ぼんやりとした頭で考える。


「クラウスだ。……いや、体調に変化はない。…ああ。気をつける。皆は大丈夫だろうか?……」


なんでなんだろう、席を少し離れ通話をするクラウスさんの背中がぼやけて見える。
段々と彼の低く落ち着いた声も、遠ざかっていくような。

急激な体調の変化に疑問を覚えるが、思考もなんだかふわふわとしてきて何も考えられない。
ただわかるのは、体が、異様にあつい。

よくわからないけど何かが体に起こっているのはわかった。
ひとまず彼に今日は帰ってもらおう。
クラウスさんに声を掛けようと椅子から立ち上がる。


「ハヅキッ!?」


が、私の足は私を支えることができず、体は音をたて床に倒れた。
やけに体が重い。

倒れこんだ私にクラウスさんが駆け寄り、触れられた彼の手が冷たいな、なんて思いながら私の思考は暗闇にフェードアウトした。



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