第2章 変化
「えーと、これをこうして…」
誰もいない夕暮れの店内でハヅキはぶつぶつと呟く。
机の上には試験管やビーカーなどの実験用具や何か材料らしきものが並べられており、それらを手に取りなにかを作っていた。
ハヅキはその中にから二種類の粉を取り出すと混ぜ合わせ、終わるとそれを丸い型に入れ蓋をし上から体重をかけ圧縮し固める。
再度蓋をあけると中には緑色をした固形の玉が出来ていた。
「よし!できた!」
うまくできたすごいぞわたし!
心の中で自分を褒めるとそばにあるトレーに置く。
興がのってきたので今日ははやめに店を閉じよう。
お客さんが誰も来ないことをいいことに表札をクローズにし店内に戻る。
仕事を放り投げ私事に熱中することにしていく。
目当てのものが何個か出来たとき、店の扉が開く音がした。
「――え?クラウスさん?」
「閉店となっていたのにすまない。入っても良いだろうか?」
「構いませんが…って、一体どうしたんですか!」
そこには全身をぼろぼろにしたクラウスさんがいて、私を見ると何故かほっとした表情をした。
表情の意味がわからず疑問だけどそれは後でいい。
どこかしらに怪我をしていることはよくあったけど、今回はいつもより更に酷い。
慌てて赤毛の紳士に近寄り椅子に座らせ治療を始めた。
「いつもより一段と酷いですね…。あ、目を閉じて下さい」
「今回の敵は厄介な相手であった」
エメラルドの瞳が閉じたことを確認して傷口に触れる。
痛々しい、まるで鋸状の物で傷つけられたような痕だった。
これは治るのがいつもより長引きそうだ、と思いながら軟膏を塗り、ガーゼで傷のあった場所を覆う。
数えきれない傷口も同じように次々と処理をしていった。
こんなに全身傷だらけなのに彼は痛がるような素振りを全く見せない。
ほんと、何でクラウスさんはよく怪我をされてるんだろう。
ちらちらとそのエメラルドが開かれていないことを確認しながら、やっと処置が終わる。
…明日はお店、休みにしようかな。
こんなに一気に処理をしたことがなく、痛む体を擦りながらハヅキは心の中で呟いた。