第1章 馴れ初め
「レオナルド、ザップ、大事はないか?」
「なんとか大丈夫っす」
街で暴れていた敵の制圧が終わり、瓦礫をどかしながらクラウスは二人に声を掛ける。
レオナルドとザップの姿を確認すると、戦闘により体中に怪我を負っていたが命に支障はなさそうが、ザップにいたっては多量の出血をしているのが見受けられた。
二人に比べクラウスの被害は軽く多少なり怪我を負ってはいるが活動をする上で支障はない。
被害の重い二人に早く手当てを受けさせた方がいい、クラウスはそう考えるとギルベルトに声を掛ける。
「ギルベルト、二人をライブラまで。私は街を見回ってから戻る」
「畏まりました」
ギルベルトに指示を出し二人を車に乗せ先にライブラに帰らせると、敵との戦闘により荒れてしまった街を見渡す。
今回のように街に被害が出てしまったときは辺りの生存率が下がる傾向にある。
争いに便乗するかのように犯罪が多発し、人々に被害がでるのだ。
クラウスとてさすがに街全体の平穏を守ることまでは力が及ばないことは理解している。
歯がゆい思いを噛み締めながら、せめてライブラへ戻るまでの道筋で人々に暴徒の手が及んでいないかを確認することぐらいは、と考え歩みを進め始めた。
「おいそこの大男、良さそうな身なりしてるじゃねえか」
「俺たちの遊ぶ金もっているみたいな、な。ぎゃははは」
「俺たちに金貸してくれよ、にいちゃん」
大通りから二つほど逸れた路地裏で柄の悪そうな異界人三人組にクラウスは声を掛けられた。
手には獲物を持ち、脅すようにそれを地面に叩きつけ威嚇している。
怪我したくなければ有り金を置いていけ。つまるところ彼らはクラウスを相手にアツアゲを仕掛けてきているのだ。
いつもならいくら金持ちそうな品性のある見目をしているとはいえ、その鍛えられた体を見ればターゲットにされることは限りなく低いだろう。
ただ今のクラウスは先の戦闘により服は乱れところどころ出血の痕が見られる。
普段なら狙えなさそうな上玉が弱った状態でやってきた、彼らにとって絶好の獲物であった。