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エメラルドグリーンに溶けて

第1章 馴れ初め


「ハヅキとはまだ恋仲ではない。彼女は植物について語り合える、素晴らしき人だ」

「そのハヅキさんとは園芸繋がりで出逢ったんですか?」

「なんだ陰毛童貞、興味津々じゃねえか」

「陰毛童貞言うな!だってクラウスさんと一緒にいる人ってなんか気になるじゃないですか!」


確かに。
スティーブンは心のなかでレオナルドに同意する。
色恋沙汰にほど遠そうなこの彼が仕事でもなく女性と過ごしていたなんて、関心がないと言えば嘘になる。


「ハヅキと出逢ったのは彼女に助けて貰ったのがきっかけだった」

「クラウスさんがそのハヅキさんを助けたのではなく?」

「そうだ。私が彼女に助けられたのだ」

「……旦那、あの女人間じゃなかったんすね」

「彼女は人間で可憐なレディだが?」


不思議そうな顔でクラウスは答える。
ザップがああいうのも仕方ない。たとえ血闘術が使えないとして彼の体格は人よりも遥かに高く、鍛えられた体は圧倒的な強さを表現している。
そんな明らかに通常の人よりは強靭そうな見た目にも関わらず、彼を助ける女性がいるなんて想像が出来ない。

スティーブンはふと、ある女性の姿が頭に浮かぶ。
先週遭遇した強盗事件の時、クラウスを庇おうとしていた女性だ。
彼を助けようとする女性なんて二人も三人もいないだろうし、きっと彼女のことだろう。


「ハヅキ・ヨシカワは秀でた戦闘能力は無いようだが、悪に臆せず立ち向かうとても勇敢な女性であったーー」


クラウスは思い出に浸るようにエメラルドの瞳を閉じると、ハヅキとの出逢いについて語り始めた。


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