第1章 馴れ初め
「え?!うそ!臨時閉店?!」
赤毛の紳士が現れるまであと少し。
私はスマホを片手に叫び頭を悩ませる。
今からクラウスさんと行こうとしていたお店の臨時閉店のお知らせを発見したからだ。
本日のランチを予定していたお店は今朝、異界人同士の抗争に巻き込まれたらしく半壊のためやむたく閉店したと。
クラウスさんと行くには品もあってかつ高過ぎないという私のお財布にもぴったりのお店だったのに。
あわててもう1つ考えていた候補のお店の情報を確認する。
うん、こっちは大丈夫だ。よかった。
ホッと一息ついていると、入り口と扉をノックする音が聞こえた。
時計を確認すると12時ぴったり。きっと彼だろう。
扉を開けると可憐な白い花の小さな花束を手に持った、エメラルドの瞳の優しげな紳士が立っていた。
「こんにちはハヅキ。今日は食事を共にできて光栄だ。よければこれを」
「こんにちはクラウスさん。ありがとうございます。かわいいお花ですね」
「うむ。このリナリアはとても美しく咲いてくれた」
「クラウスさんが育てたんですか?すごく素敵です」
「君にそう言って貰えて嬉しく思う」
花束を受け取りながらクラウスさんを誉めると少し照れたように笑っていた。
観葉植物だけでなく花まで育てているなんて、本当に植物が好きなんだなぁ。
きっと身を屈めてこのリナリアも丹精込めてお世話しているんだろうな、と思うととてもほっこりした気持ちになった。
「さ、行きましょう!クラウスさん」
「うむ。君とならどこへでも」
「ふふ、おおげさですよ」
私たちは一緒に店を出て大通りを歩きだす。
クラウスさんを誘導し第2候補のお店に向かうのであった。