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私は君の幼馴染

第3章 苛められ同盟


正しい人がいつでも人々からの称賛を受けられるわけじゃない。閉鎖空間の抑圧に鬱屈し「皆と同じ」を重んじる中学校高校なんて、周りと少しでも違う行動を取れば突き上げられて叩き潰される。
努力は格好悪い。一生懸命はダサい。世界の為とかどうでも良い。自分達が楽しければそれで良い。
そんな、右向け右の染みついた幼体の群れの中、血染ちゃんは純粋が過ぎた。
「堕落に耽りし貴様らが、英雄の名を騙るな。貴様らのような利己主義者が、彼の如き純粋な英雄の名を囀るな」
確かに血染ちゃんの言葉は厳しいものだろう。それでも、血染ちゃんをこんな風にした奴等には十分に配慮した言葉だ。中高一貫の校舎裏、横倒れに転がる血染ちゃんを見つけて、そう思う。
「血染ちゃん、生きてる?」
「……無様を晒して汗顔の至りだが、とりあえず生きてはいる」
ぼさぼさに切り刻まれた髪の中から、血染ちゃんの声が聞こえる。前髪を掻き上げて顔を確認すると、酷い物だ。右目は殴られて腫れて、鼻血も出て、口の端も切れている。鼻血については私も垂れ流している最中なので、人のことは言えないが。服を奪われた血染ちゃんの、取り敢えず上体を起こす。好きな人の裸を前にしても、此処までボロボロでは羞恥や照れなど起きない。血染ちゃんを数の力でリンチしたのだろう悪漢共への怒りしか涌かなかった。
「血染ちゃん、君は言わないだろうけど、一応確認。誰にやられた?」
「……未来の英雄の名を騙る偽物共だ。白が名を知る必要もない」
それより、と、血染ちゃんは無事だった方の目で私を見つめる。お前は誰にやられたんだ、と。私は自分の無様を隠す気もなく、また私を無様にした輩を庇い建てる気もなく言った。
「クラスのクソババア共に殴られた」
「……お前の怒りは分かるが、悪し様な物言いをするな。下等な相手を前にお前の品格を落とす必要はない」
「そうだね。自分より年上の相手をババアと言うのは良くない。じゃあ、クソに殴られた」
「ハァ……お前は……まぁ良い、何があって暴力を振るわれた?」
溜息を吐く血染ちゃんを前に少し考えたものの、バレるのは時間の問題だからと、私は素直に答えを出した。
「クソ共が『赤黒ってヒーローナードがリンチされててウケる』と話していた。私が『幼馴染を馬鹿にするな』とリーダーの頬を引っ叩いたらリンチに遭った。隙を見て頭突きして、血染ちゃんの救助に来た」
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