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私は君の幼馴染

第2章 私たちの個性


「ヒーローとは無私なる奉仕者であるべきだ。そこに私情の混在はあってはならず、利益を欲するなど以ての外だ。英雄に『我』が存在してはならない。ヒーローとなるその時、我々は『人』であってはならないのだ」
中学校に上がった血染ちゃんは、小学生の頃より難しい言葉を使った。私は血染ちゃんの言葉を理解出来ぬまま、それでも話を聞いていた。理由はただ一つ、血染ちゃんの傍にいたかったからだ。
「つまり……ヒーローは他の人よりもずっと頑張れ!ってこと?」
「……白。残念ながらお前の頭脳は、言語の理解力が低いようだ」
「酷いなぁ。これでも学年ではトップクラスだよ?だって、勉強できなきゃ現場で働けないもん」
血染ちゃんが中学生に上がる頃、高校生の私は進路も決めていた。医療現場で働く、それが私の目標だった。
「血染ちゃんがヒーローになるなら、私はお医者さんになる。私の個性は戦闘向きじゃないし、戦闘自体不得意だ。血染ちゃんが世界へ貢献する時に、私が世界へ貢献する方法は、この道しかない」
「この道しかない、と悲観的な表現をするな。お前の思考や行動は、尊い。己が個性を見極め、人々を救済する奉仕の方法を見出し、その世界へと脇目も振らず歩み続ける。その在り方も、英雄と言って過言ではない」
お前はかのリカバリーガールにも届く救い手となるだろう。血染ちゃんの言葉に、やや気恥ずかしくなる。
「それは褒め過ぎだよ。私の個性は、彼女のように人を救うことは出来ない」
私の個性である【血療:血液を与えた対象者の傷病を治癒させる能力】は、それだけを伝えれば奇跡のような個性だが、これには大きな副作用がある。少量であれば傷病を治癒させる私の血液は、簡単に言えば私の血液の分だけ新たな細胞を増加させているだけ。つまり大量に使用したとすれば、相手の細胞を異常増殖させてしまう。その中に遺伝子の壊れた癌細胞があれば、対象者を癌に侵させてしまうことになる。
「……使い方を誤れば危険を帯びる。それはどの個性にも言えることだ。俺自身の【凝血】にもな」
血染ちゃんの言葉は、私への慰めであり、それでいて、血染ちゃん自身への慰めでもあったかもしれない。血染ちゃんの【凝血:対象者の血を経口摂取することで、一時的に対象者の体の自由を奪う能力】はヒーローの目指す少年の個性としては、好き好んで望み手に入れるような個性ではなかっただろう。
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