第2章 瀬見英太~年上彼女~
“今から家に行く”
LINEで伝えていたのが良かったのか、玄関で出迎えた彼女は落ちついていた。いや、落ちついていたというよりかは覚悟を決めていたという表現が正しいだろう。
「別れ話...というわけではなさそうだね」
自嘲気味に、ただ少し驚いて彼女は言った。
「もう過去の話だろそいつは」
「うん」
互いに何度も視線を合わせながらも、ぎこちないタイミングでキスをする。
タイミングこそスムーズではなかったが、布越しでも体が合わされば壁が徐々に溶けていくのを感じた。
ピタリとくっつく肌に男の俺とは違う柔らかさを感じて隅々まで触っていたくなる。
彼女がいつも身につける白いブラウスは妖艶さを引き立てていて、全てのボタンを外しブラジャーから零れる胸の膨らみを覗くのが何よりの楽しみだった。今日はその布が邪魔だ。
口内を犯すキスと共に剥ぎ取ると
「今日は...ちょっと乱暴だね?」
当惑する彼女の言葉を無視して耳の形に沿い舌先を動かす。
「ひゃぁんっ!」
驚きに似た甘い声に心の中でガッツポーズをする。
「ここ、弱かったんだ?」
「そんなこと...」
恥じらう姿に自分の中で何かが外れた音がする。
力任せに彼女が纏うもの全てを剥ぎ取るが、舌先は執拗に耳の中を舐った。
「んっ!そこばっかり...」
「声出したら止めんぞ?」
「......っ」
目を固く瞑り耐える姿に俺の熱量ははち切れんばかりだった。ヤベェ、我慢させんの癖になりそう。
耐える彼女は空を泳ぐ手を俺の後頭部に載せて、激しく髪を掴むかと思いきや、どこまでも優しく撫でた。
「瀬見くん、やり切ったんでしょ?自分を貫けたならいいじゃない」
試合に負けて引退したあの日、堪らずあのカフェでコーヒー片手に涙している俺に優しく言って撫でてくれた手だ。
あの日を思い出して記憶に思いを馳せれば心地良さに目を閉じていた。