第2章 奥山
その刹那。
視界が一気に開けた。
外濠と壁に囲まれた…俺たちが見てきた駅よりもずっとずっと大きな駅。
「…これが、奥山駅。」
地図でわかっていたことだが、それでも驚いてしまうほどの大きな駅だった。
山3つ分を切り開いたと言っても過言ではない。
囲まれた壁よりも高い建物がいくつか見える。
目を凝らして見ると、壁や建物には蔦やコケ一つなく、きちんと手入れされていることを物語っていた。
俺の中で明るい予感がはじける。
カバネに潰された駅ならば、こうはいかない。
なによりも、人がいないあの廃駅独特の不気味な雰囲気が感じられない。
ここには…人がいる。
そう直感でわかる駅だった。
こんなにも大きく、そして存続している駅だ。
十分な設備と物資があるに違いない。
昨夜までの沈んだ感情が一気に吹き飛ばされ、俺は叫んだ。
「菖蒲様、とても大きい駅でございます!手入れも行き届いている!ここには人がいる、人がいる駅です!!」
鉄パイプ越しに皆のどよめきが返ってきた。
少し遅れて菖蒲様の明るいお声も返ってくる。
「本当ですか!来栖!よかった、本当に良かった!」
汽笛を鳴らす。
汽笛を鳴らして、駅の中からも音が返ってきたら…
本当に人がいて、俺たちを受け入れてくれるという合図だ。
空に汽笛の轟音がとけていく。
それから少しだけ時間をおいて…
駅の中から甲高い音が返ってきた。
同時に駅の扉がゆっくりと開いていく。
減速しながら駿城が駅の中へ滑り込んでいく。
どよめきが俺たちを包んだ。