第2章 奥山
翌朝、突然頭に鈍い痛みを感じて飛び起きた。
駿城が酷く揺れている。
壁に頭をぶつけたのが痛みの原因らしい。
「なんて揺れだ…」
思わずつぶやいて外を見た。
外に出ると、昨夜とは一転変わった景色が広がっていた。
定期的な補修もされていない、山の中に無理やり作られた線路はまるでつぎはぎのようだ。
幼子が悪戯に書いた落書きのように曲がった線路が続いている。
しかし、風景は別格の美しさだった。
鬱蒼とした緑と、澄んだ青空が美しい対比を見せている。
空気も綺麗だ。よどみというものがない。
こんな一面に広がる緑は、久しぶりに見た。
「あと少しで駅につきます!最後に大きな曲がり角!つかまって!」
侑那の声が鉄パイプを通じて響いてくる。
前を見ると、目の前で直角と言っていいほどの角度で線路が曲がっている。
無理やりすぎるだろう、これは。
慌てて目の前の手すりをつかみ、足に力を入れる。
車輪と線路が酷く擦れ、火花が散るのが見えた。
車体が大きく揺れる。
駿城の中からくぐもった子供の叫び声が聞こえた。
派手な音を立てて、駿城が進行方向を思いきり変えた。
勢いについつぶっていた目を、恐る恐る開ける。