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忠心 -甲鉄城のカバネリ-

第2章 奥山


駅は高台に設置されており、駿城からこの駅全体が見渡せるようになっていた。

決して華美ではない。しかし、とても素晴らしい駅だ。

街の中央に見張り台や目印の役割を果たしているのであろう、大きな塔と館がそびえ立っている。
あれが領主の邸宅だろうか。
その塔を中心として、渦巻き状に民家や商店がぎっしりと並んでいる。
そしていたるところに木が生えていて、気温が冷たいからであろう、それはまだ桃色の割合が多い葉桜であった。
奥のほうは完全に緑で塗りつぶされている。
あれは山…それとも大きな森か。

菖蒲様が外に出てきて、感嘆の声をあげた。

「来栖…とても素敵な駅ですね!桜があるなんて…」

最後に大きな音を立てて、駿城が止まる。
それを合図のように、一人の男が近づいてきた。

よく日焼けした肌、大きな体。
普段は農業を生業としている男なのだろうか。
あまり客人は来ないのであろう、その男含め、皆が驚きながらこちらを見つめている。

「こちらは奥山駅を管理している治田と申す。そなたらは…」

低く野太い声ではあるが、威圧感はない声だ。

俺は急いで駿城を下り、菖蒲様に手を貸す。
菖蒲様はゆっくりと駿城を下りて、一歩前に出られた。

「西ノ国、顕金駅から参りました。四方川家領主、菖蒲と申します。突然お邪魔し、驚かせてしまいましたね…。」

顕金と聞いて、治田は目を丸くした。

「顕金駅…西ノ国の…。
それは長旅ご苦労であった。こんな山奥まで、大変であっただろう。
何分、奥山は名前の通りこんなへんぴな場所にある駅だ。
客人を迎え入れるのは慣れていなくてな…」


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