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忠心 -甲鉄城のカバネリ-

第3章 水


「10万でも…カバネを倒せなかったのね…。
それであなたのお父様も…。」

「ああ。10万人でもカバネを倒せないなら、と一気に世論は穏健派へ傾いた。
俺はもう少し成長した後、俺は幕府の腹の内を知った。
幕府は穏健派だった、とな。」

鋭華はしばらく沈黙していたが、俺の言葉の意味を理解したらしい。
息をのむ音が聞こえた。

「幕府は内心穏健派でありながら、主戦派を戦いに行かせたってこと…?」

「ああ、そうだ。
かみ砕いて言ってしまえば、主戦派は都合よく扇動された。
都合の悪い奴らをとりあえず外に行かせて死なせればいい。
それを見た民はやはりカバネは倒せない、と穏健派になる。
それを見越したうえでの、幕府の行動だった。」

「そんなの…」

「それから、主戦派だった家族の扱いは散々なものだ。
国賊、と罵られることはもちろん、道を歩けば暴言を吐かれ、何か少しでも無礼があれば指導という名の暴力だ。」

正直、そんなものは慣れてしまえば辛くはなかったが。
やはり父のことを罵られるのはどうしても慣れなかった。
幕府の真意を知ってからは、なおさら。

「いつか九智家の名誉を取り戻したい。
そう思いながらも、そんな機会すら与えられなかった。
人間扱いなどされなかったからな。」

「本当にひどい話ね…。
でも、今あなたが菖蒲様の護衛を務めてるってことは昇進をしたってことよね?」

鋭華のその言葉に、俺は目を閉じる。

このまま罵られながら虫けらのように死んでいくと思っていた俺に、突然降ってきた転機。
それが菖蒲様だったのだ。


「些細な偶然だった。
駅を視察されていた菖蒲様が野良犬に襲われた。
そこに偶然居合わせた俺が、お助けしたのだ。」





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