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忠心 -甲鉄城のカバネリ-

第3章 水


竹中家に向かう道中、俺と鋭華は様々な話をした。
とりわけ鋭華は外部の話に興味を示した。
西ノ国の技術や文化。生活の仕方。
俺たちが当たり前だと思っていたことも、鋭華にはひどく新鮮なことのようだ。

改めて、奥山の閉鎖性を思い知る。
今まで見てきた北国の駅から察するに、情報など仕入れることができないのだろう。

少しだけ、四方川家のことや九智家のことも話した。

「そう、今の領主様とは同い年なのね。
生まれた時からの主従関係ってことかしら?」

「いや、そうではない。
情けない話だが…様々な事情で九智家の名は地を這いずりまわっていた。
顕金ではいびられていた。」

「…権力争いとか、政治的な何かが原因かしら。」

鋭い女だ。
その通りだ、と俺はうなずいた。

「かつて…顕金では積極的に外部に出てカバネを倒して行くべきだ、と唱える主戦派と、駅にこもって守りを固めるべきだ、と主張する穏健派の対立が激しくてな。
俺の父は前者だった。
妻、つまり俺の母もカバネに殺されたからな、復讐したいという思いもあったのだと思う。」

愚か者、無意味にカバネに噛まれて死んだ者…
亡き父はそう罵られていた。                               
「いつ衝突してもおかしくない、それくらい2つの勢力の対立は激しかったらしい。
幕府は対立を恐れて、主戦派を戦いに行かせた。
一度主戦派の希望を叶えるべきだと思ったのだろう。
結果、10万の軍勢で、壁の外に出た。生きて帰ってきたのは数千にも満たなかったらしい。
当然そこに、俺の父はいなかった。」
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