第3章 水
こんな自然あふれる駅がまだ存在していたなんて。
いつか顕金駅も、こんな駅になることが出来るだろうか。
稲穂が広がり、民が幸せに暮らす景色を見たい。
そんな菖蒲様の夢。
その夢が叶う日が来るだろうか。
そんな駅になったなら、俺はどうしようか。
何かを殺すためではない。
自分を律するためだけに、剣術を学びたい。
そして、九智家の名誉を取り戻したい。
不条理に虐げられることのない環境で、暮らしてみたい。
深呼吸をすると、今までため込んでいた胸の中の黒いものがすべて出ていく気がした。
それと引き換えにするように、澄んだ空気を思い切り吸い込む。
色々なゴミのようなものが、胸の中にたまっていたのだ。
それらに向き合って、一つ一つ対処する余裕などない中生きてきた。
顕金駅が陥落してから、自分のことをしっかりと考える余裕などなかったのだから。
もう一度深呼吸しようと、一度息を止めた時…。