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忠心 -甲鉄城のカバネリ-

第2章 奥山


竹中家の館は、年季を感じさせたが大きく趣味のよい館だった。

領主の竹中も、日焼けした肌に白い歯が際立っている。
節の高い指で、年齢は50に届きそうなところであろうか。

「これはこれは…来客などないから驚いた。
あわてて正装に着替えて来たんだが、着慣れていないから落ち着かんな。
顕金駅なんていう遠い駅から、よくぞ来てくださった。
ようこそ、奥山駅へ。」

ケラケラ笑いながら冗談を飛ばす竹中に、菖蒲様も声を上げて笑う。
これまた人のよさそうな男だ。
しばらく笑うと、竹中は菖蒲様を見据えた。
まるで、父が娘を見るような、慈愛に満ちた目だった。

「顕金駅での惨事は、伺っておる。そなたのお父様の件は…誠に残念であった。
立派な領主だと、風のうわさで聞いたことがあってな。
菖蒲殿は、まだお若いのに難儀なことであった。
そして駿城を走らせてここまで来てくださった。
大変なこともたくさんあっただろう…」

心からねぎらうような声色に、菖蒲様が少しだけ目を潤ませた。

「お心遣い、ありがとうございます。
そして優しいお言葉も…。
ここの方々は、とても優しい方ばかりでなんだか安心してしまいます。ねえ、来栖。」

振り返って微笑まれた菖蒲様に、目だけで肯定の意思を伝える。
竹中は俺にも優しく微笑んで、意志の強そうな勇ましい青年だ、と呟いて続けた。

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