第4章 私の進む道
───私は今日、地元を離れる。
これから新しい生活が始まる。『東京』という地で自分の夢を追いかける。
不安?もちろんあるよ。ないっていう方が凄いと思う。美香はって?そりゃ放っておけないさ。ずっと一緒にいたんだもの、心配で仕方がない。
でもね、美香は言ってくれたんだ。
『お互いに夢を叶えて、また会おうね』
あれだけ断ったのに、美香は結局私に会いに来た。家を出ると美香が立っていた。メールぐらいよこせばいいのに...。
『夏海の願いだから、駅までは見送りに行かないよ。少し話したかっただけ。』
───少し?20分は話してたよマジで。お陰で新幹線乗り遅れそうだよ。まぁ美香らしいけどね。
私は新幹線に乗り込む。誰からも声をかけられずに、1人で───
と、その時、ポケットに入れていた携帯が鳴った。
いけない、マナーモード設定しないと...と思いつつメールを読む。
宛先は美香。
そこには1枚の写真が添付されていた。
寄せ書き。
美香をはじめ、クラスの友達が私宛にたくさんのメッセージを教室の黒板に書いてくれていた。
本文には『あの後、夏海には秘密で集まって何かしないか皆で考えたんだ。クラス内で上京しちゃうの夏海だけだし。でも大勢で騒ぐのって夏海あまり好まないでしょ?皆で相談してこういう形になった。今頃は新幹線に乗ってるかな。東京でも頑張ってね。
また会おう』
寄せ書きには個々の夢が書かれている。医師、美容師、スポーツ選手、薬剤師、イラストレーター...
そして『声優』
私の夢もしっかりと書いてあった。これは美香の字かな。
夏海「──泣くつもりなかったのに」
私は涙を堪えることができなかった。
新幹線のドアが閉まる。
もうここには当分戻ってこない。
私は声優への道を歩き始める。