第6章 声
川口「大久保さん、何食べますー?私から誘っちゃったんだし奢りますよー!」
夏海「えっ、いや、それはさすがに悪いんじゃ──」
川口「すいませーん!注文お願いしまーす!」
はい、完全に川口さんのペースですね、はい。乗せられてますね、はい。なんて明るい方なんでしょう、スーパーハイテンションとはまさにこのこと。
そんで話がはずむはずむ。私もいつの間にか川口さんと同じペースに。端から聞いたら高校生同士のおふざけな会話にしか聞こえないだろう。
結局川口さんに奢ってもらってしまった...今度何かお返ししなくちゃな。
川口「じゃ、そろそろ行きますか!また電車乗るけど。ここからあまり遠くないから」
夏海「あ、そうなんですか。すいません、なんか色々と...」
川口「いいんですよー、私が好きでやってることですし」
川口さん優しすぎるでしょ、んで笑顔可愛すぎでしょ。エンジェルスマイル。川口さん絶対モテすぎて辛い系女子だ←
他愛もない会話をしながら駅へ向かう。川口さんは人混みの中をすらすらと進んでいく。有り難いことに私の荷物を半分ほど持ってくださっている。それでもこの人混みの中をこんなにさらさらと...川口さん一体何者。
田舎生まれ田舎育ち、人混みになんて全く免疫のない私は戸惑ってばかり。川口さんは私に合わせてくれたけど。
そんで通勤時間でもないのに電車にかなりの人。いや、あくまでこれが普通。あのド田舎がいけない←
川口「東京は慣れちゃ駄目ですよ?」
夏海「へ?」
川口「いや、そりゃ徐々に慣れちゃいますけどねー。いつでも新鮮な気持ちで前向きに、ね」
新鮮な気持ちで、か。人間は慣れていくとだんだん物事を適当に済ますようになる。気持ちを切り替える場面はしっかり切り替える。気を引き締める。新しい気持ちで臨む。これ結構大切なことだよね。川口さんみたいな人がもっと増えたら日本はさらに活気づくと思う←