第3章 別れ
寺島「───可愛いなぁ」
夏海ちゃん、完璧に寝ちゃった。やっぱ天使、すげー可愛い。
───初めて見たときから思ってた。
演劇部に足りなかった『悠真』役。偶然見かけた夏海ちゃんは、カッコよくて、大人っぽくて、それでいて可愛い。あの子に『悠真』をやってほしいと心から思った。正直、あの時点で一目惚れしていたのかもしれない。
演劇部に助っ人として来てくれている間は一緒に帰らないかって毎日誘った。途中からは一緒が当たり前だった。公演会が終わった後も、校内で見かけると必ず一言でも声をかけた。夏海ちゃんもよくかけてくれた。
今こうして夏海ちゃんの手を握っているだけで、落ち着くというか、安心するというか...
寺島「───いつ気づいたんだろうなあ...」
正直、公演会が終わったあたりではもう分かっていた。...つもり。
もっと早く出会っていれば、早く気づいたかもしれない。もっと早く気づいていれば、伝えられたかもしれない。
出会いから別れまでが、俺にとってはあまりにも早すぎたんだ。
俺は静かに眠っている夏海ちゃんの髪をそっと撫でた。
寺島「─────大好きだよ」
目が熱くなった。堪えていたつもりなのに、収まり切らなくなった涙は俺の頬を伝った。
─────離れたくない。
俺は夏海ちゃんの手を握ったまま、眠りについた。