第3章 別れ
夏海ちゃんは俺が作ったお粥をきれいに食べてくれた。全部俺が食べさせてあげたんだけどね。今更だけど俺すごいことしてんじゃ...?
寺島「───夏海ちゃん、無理してたでしょ。もう3月だけどまだ少し肌寒いんだから、あんまり無茶しちゃ駄目だよ。」
夏海「す、すいません...」
夏海ちゃんはお腹も満たされ、既に意識もハッキリしていた。
夏海「でも、もうすぐ卒業式ですから。ちゃんとしないと...」
寺島「頑張るのはいいことだけど、無理は駄目。次したら俺が許さないよ?」
夏海「は、はい...すいません...」
寺島「───話変わるけどさ、前に喫茶店で話したとき...」
夏海「あぁ、あの時はありがとうございました。」
寺島「そんなお礼を言われるほどのことじゃないって。俺はただ夏海ちゃんとお話したかっただけ。───あれから見つかった?夏海ちゃんのやりたいこと。」
夏海「───いえ、まだ...」
そりゃ無理もないか。最近は忙しいんだし、今はそっちに集中しないといけないんだもんね。正直、落ち着いてから考えても間に合うよね。
夏海「───でも、私、あの時思ったんです。寺島さんみたいな人になりたいって。」
寺島「えっ、俺...?」
夏海ちゃんは静かに笑った。頬が少し赤いのは熱のせいなのか、それとも────
夏海「『声優』っていう夢を持っていて、それに向かって真っ直ぐで...寺島さんなら、絶対に素敵な声優になるんだろうなー..って...。私も自分のなりたいものを見つけたいんでしょうね。好きなことに打ち込んだりしてみたいんです、多分。」