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また逢える日まで【進撃の巨人】

第3章 100年に一度の贈りもの【モブリット】



今まさに二人きりで部屋にいるこの状況は、一体何なのだろう?
イレーネさんにとって、俺って何だ?


紙とペンを置き、深く息をついた。

「イレーネさん。ちょっと中断していいですか?」

「ん?」

「ずっと言えずにいた俺も悪いんですけど」

「何?」

「今、夜の11時です」

「うん」

「部屋には、俺たち二人きり」

「……」

「目の前には下着が見えそうな程衣服を着崩している女がいて…」


驚いたように胸元を閉じたイレーネさんの片手を掴む。


「俺は、男です」


明らかに戸惑いの色を見せるイレーネさんに構うことなく、グッと力を入れ、引き寄せた。


「俺、そんなに安全な男に見えますか?」


これ程イレーネさんに近づいたことはない。
呼吸どころか、瞬きの音すら聞こえてしまいそうな距離。
今の俺は、嫉妬と苛立ちに任せてこんなことをしている。
何年も近くにいた俺よりも、つい最近知り合ったばかりの男を異性として意識しているこの人に、理不尽な怒りを覚えたのだ。


「…ちが…う、わたしは…」


眉尻を下げた彼女が見える。
上擦った声が緊迫した空気を揺らしたところで、俺はようやく冷静さを取り戻した。

怖がらせている……大切な女性を。

まざまざとそれを感じ、慌てて手を離し机に向き直った。

「すみません…。これ、持ち帰って俺が仕上げておきますから」

イレーネさんの顔を見られるはずもなく、つい口早になってしまう。
雑多に広がった資料と作成途中の記録を掻き集め、席を立った。
静まり返った廊下に踏み出し後ろ手で部屋の扉を閉めたと同時に、自己嫌悪の錘がのしかかる。


どうしてあんなことを…。
これまで、想いを悟られないように努めてきたつもりだ。
調査兵団に身を置く以上、別れは突如やってくる。
イレーネさんは優しい人だから…
もし俺が先に逝かなければならなくなったとき、この想いは枷になるかもしれない。
そう心に釘を刺してきたのだ。

それなのに俺のしたことときたら…
男らしく気持ちを伝えるどころか、ただイレーネさんを怯えさせただけ。


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