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また逢える日まで【進撃の巨人】

第3章 100年に一度の贈りもの【モブリット】



「どこまで終わりました?」

「火曜日の実験のまとめまで」

「じゃああとは、金曜日の分だけですね。さっさと終わらせましょう」

「うん。ごめんね、モブリット。いつも手伝ってもらっちゃって」

「こちらこそすみません。ハンジ班でやるべき仕事を…」

「ううん。仕事自体は嫌じゃないんだよ?でも要領悪いから…」

「大丈夫。二人でやればすぐですよ」

宥めるようにイレーネさんの両腕にポンポンと手を添えて、そっと自分の体から引き剥がした。
これからひと仕事だというのに、変な気を起こすわけにはいかない。



二人で手分けすれば、作業は順調に進んでいく。
乱雑に走り書きされたハンジさんの筆跡を辿っている中、背後からイレーネさんが近づいてくる気配がした。

「ねぇ、モブリット。この数式ってどういうこと?」

差し出された一枚の紙を受け取り、目を通す。

「ああ、火薬の配合ですね。どうやって解くんだったかな。薬物や危険物の配合はポールさんが得意で…」

ペンを取り考えようとしたところで、イレーネさんの指が右肩に触れた。
俺の手元を覗き込むようにして、顔を寄せてくる。

……近い、近いですって!

何でこの人はいつもこうなんだ。
今みたいに体に触れてきたり、夜更けに男が自室にいるというのにシャツの胸元を着崩していたり。
警戒心がなさ過ぎる。

「ポールさんって、技術班のポールさんよね?」

「はい…」

「あの人すごく優秀なんでしょ?この前も実験内容のことで困ってたら、色々教えてくれたんだ」

「え?」

「でもね、根詰めすぎだからって、気分転換に部屋で飲まないかって誘われたの」

「……」

おいおい…。それ、イレーネさん完全に狙われてるだろ…。

ポールさんは確かに頭脳明晰で頼りになる。
ハンジ班としても個人的にも、何度お世話になったかわからない。
が、無類の女好き。
酒場で見かけるたび違う女性を連れている。


「まさか…行ったんですか?部屋に」

「ううん、さすがに部屋に二人きりなんて…。一応私も女だし警戒するっていうか…自意識過剰かもしれないけど」


長い間、腹の底にわだかまりとなって居座っていた黒い感情。
これまでは流せたはずなのに、突如何かが崩れる音がした。


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