第2章 day1 「有栖川 帝統」
「は?オプションにコンドームありのセックスを入れろ?お前馬鹿なのか?」
提案した時に店長に言われた言葉。
「お金、稼ぎたいんです。」
「だからってお前…
流石に店じゃ庇いだて出来ねえぞ。」
「分かってます。」
デリヘルは本番は禁止。
それでも稼ぎたい。
「信頼のある常連さんとしか寝ません。
寝たら報告します。
オプションの半分はお店にバックします。」
お金が必要なの。
今の生活を変えないために。
「っ…あーもうっ!」
店長は悩みながらも私の目を見る。
「面接ん時に聞いてるから金を稼ぎたい理由もわかってる。
大学行きながらじゃあなかなかシフトも入れられないしな。」
「店長…」
「でもな、どれだけ人気になれるかは自分の接客にかかっていること、忘れるなよ。」
頭の上に置かれた手は乱暴にわしゃわしゃと撫でる。
「無理だけはするな。ゆいな」
「分かってますよ、店長。」
「あ、コンドームは自費な?」
「そこは経費で落としてくださいよ。」
今までわしゃわしゃと頭を撫でていた手は容赦なく私の額を弾く。
「経費で落としたら店がグルだってばれんだろ。」
バーカ、と軽くいなされ背中を押される。
「わがままを聞いてくださって、ありがとうございます。」
私は小さく、そう呟いた。