第1章 ローがCPの一員だったら※
騙すために始まった恋は、いつしか本物の恋になっていた。
(このオレが……こんなにもアイツを愛しいと思うとはな…)
ローは自嘲気味に笑った。彼女のためなら、このサイファーポールでの野望も捨てられる。また別のやり方を考えればいい。そう思えるほどに、ローの中でレイラの存在は大きくなっていた。
できるなら、遠くへ逃げて欲しい。そう自分の元から去った彼女を思った。だが、彼女の足で逃げられるところなんて、たかが知れていた。
…ドンっ!
「す、すみません…!」
「あら、こんなとこに迷い込んだのね、子猫ちゃん。」
その声に、レイラは恐る恐る顔を上げた。
……!
目の前に、白い服を着た女が立っていた。
「…あ…」
(白い服…)
逃げる間もなく、その女の拳がレイラの腹部に入り、レイラは気を失った。手足を縛り上げられる。
「まったく…いつまで泳がせとくのかしら、ローは…」
溜息混じりに言葉を吐き出すと、電伝虫を取り出した。
「対象者確保したわ。」
「…始末しろ。」
「了解。」
「…ん…」
背中から伝わる硬さと、冷たさに目を開くと、周りにはたくさんのコンテナや樽が積み上げられていた。
(ここは……どこ?)
レイラは記憶の糸を辿る。
(私、女の人に…ぶつかったような…?彼女は白の服を着ていたような…あの人は…誰?何かの組織の人間なの?)
色んな考えが頭の中を巡った。手足を動かすも、後ろに縛られている。声も出せないよう、口も塞がれていた。頬を伝う大粒の涙が、土の地面を濡らした。
「お目覚めのようね。わたしはステューシー。ローと同じサイファーポールよ。」
「……んん」
「あら、ごめんなさい、今取ってあげる。」
ビリッと剥がされたテープ。
「ローは…サイファーポールの人間なの?」
「あら、知らなかったの?全てあなたを捕らえるための芝居だったのよ!」
銃口を向けられた時だった。ローが飛び込んできた。
「やめろ、ステューシーっ!!」
「あら、ロー。あなたの代わりに捕らえておいたわ。」
「勝手なことすんじゃねェ。こいつはオレの玩具だ。どう始末するかは、オレが決める!」
(……始末…玩具…?!)