第4章 不思議な果実
「登ってませんよ。」
レイラは、登れるわけがない、というような顔で苦笑しながら返した。
「じゃあどうやって…?」
「だから、私を呼んでいたって言ったじゃないですか。」
キッドの頭には、思いっきり疑問符が浮かび上がっているのは言うまでもない。
(何言ってるんだ…?コイツは…)
キッドは、口を結び、足早にレイラの元に近寄ってきた。
「…キッドさん?」
無言で真面目な顔で近寄ってきたキッドに、レイラは、目をパチクリさせた。
キッドは、優しい手つきでレイラの額に手を当てる。
「…熱は…ねぇな…。」
「……?」
今度は、レイラの方が疑問符を浮かべた。
「…あの…キッドさん…?」
「はぁー…。あのな、お前、この実が話せるわけねぇだろ…ったく、何を言い出すのかと思えば…」
呆れたような顔で、レイラを見ると、レイラの瞳に涙が溜まっていた。
彼女のこういう顔が、キッドは弱い。
「ほんとだもん!別に信じてもらえなくていいっ!」
キッドさんのばか!とでも言いたげな様子でレイラはキッドを見た。
「…!うっ……」
キッドはその表情に一瞬たじろいだ。
ぷいっと、キッドに背を向け、ずんずんとレイラは歩みを進めていく。
「…っおいッ!待てっ!」
「……来ないでくださいっ!」
頬を膨らめた彼女のあまりにも可愛らしい顔に、キッドは、立ちすくんだ。
そして、ハッと我に返り、再び彼女に待つよう声をかけた。
「待てと言ってるだろっ!奥は…っ!」
その途端、彼女から盛大な叫び声が上がった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
驚き、腰を抜かして動けなくなっている彼女の傍にあわてて駆け寄る。
「だから、待てと言っただろうが!バカが!」
「……」
わなわなと震え、涙目でキッドに助けを求めた。
「……ふぇぇっ…キッドさぁん……」
キッドの服を両手でギュッと掴んだ。
キッドは、たまらず抱きしめると、腕の中の彼女はキッドの胸に顔を埋め、声をあげて泣き始めた。
「…っく…ぐずっ…こわい…です…」
「待ってろ。」
キッドは、自分たちを喰らおうと威嚇してきている、オオカミたちに向かって覇王色の覇気を放った。
オオカミたちは、キッドの覇気に怯えて、森の奥へと戻っていった。