第3章 誕生祝い to Jun
やって来た映画館は、平日だけど夏休みだからそこそこ混んでいた。
「これでいい?」
「うん、潤が観たいのでいいよ」
潤が選んだのは人気アニメの劇場版。
潤は原作も大好きらしい。
俺はあんまり詳しくないけど。
誕生日祝いなんだから潤の観たいものを観るのがいいに決まってる。
チケットを買って、ポップコーンとジュースも買って、早々に席につく。
潤が選んだのは最後列のど真ん中。
ラッキーなことに隣は空席。
他愛もないお喋りをしながらポップコーンを半分こして食べて。
照明が落ちて予告編が始まるタイミングで、口を閉じて前を向いた…んだけど。
急に右手があったかくなって。
びっくりして見たら潤の左手に包まれていた。
俺がガン見してんのに、潤は何食わぬ顔してスクリーンを見つめたまま、俺のことなんかチラとも見ない。
なのに、一瞬手が離れたと思ったら今度は指を絡めて繋ぎ直されて。
いわゆる恋人繋ぎってやつに、ボボボっと顔が熱くなる。
暗くて本当に良かった…
今絶対真っ赤だよ、俺…
恥ずかしくてどうしていいか分からなくて。
モゾモゾと少し身じろぎしてしまったら、繋いだ手にぎゅっと力が込められた。
無言だけど、離すなって言われてるのが分かる。
別に離そうとした訳じゃないのに…
ただ恥ずかしくてじっとしてられなかっただけでさ…
心の中で言い訳をする。
別に俺だって手を繋ぐのが嫌なわけじゃないんだからな…
伝われ!と念じながら俺もぎゅっと握り返したら、やっぱり潤はこちらを見なかったけど。
その口角は嬉しそうに上がってた。