第22章 カレー騒動
カズの可愛さにもう何もかもどうでも良くなりかけて。
すぐに、これだけは伝えておかなければと思っていたことを思い出した。
「あのね、カズ。確かに智くんのカレーは美味しかったし、このカレーも俺史上最高に美味い。でも今までカズが作ってくれてたカレーだって俺は本当に美味しいと思ってる…っていうか、今までカズが作ってくれたもの全部美味しいからね!」
それだけは誤解しないでほしかった。
おかずが梅干し1個だけだった今日のお弁当だって美味しかったから!
そりゃ、いつものお弁当との落差にカズの怒りを感じて凹んだけど…
それは怒らせてしまったことに対してであって、お弁当に対してではない。
「いつもありがとう」
心からの感謝を込めて頭を下げたら、カズが涙目になってぎゅうっとしがみついてきた。
「翔ちゃん大好きぃぃぃ」
「うん、俺も大好きだよ」
思いっきり抱きしめたらすごく幸せで、もう大丈夫だって心の底から安心して。
気が緩んで滲んだ涙はカズにバレないようにこっそり拭った。
しばらくぎゅっと抱き合ってから食事を再開した。
カズと離れがたかったけど、せっかくのカレーが冷めてしまうのも忍びない。
でも離れたくないのはカズも同じだったみたいで。
手を繋いだまま隣に座ると、俺のスプーンを手に取った。
「俺が食べさせてあげる♡あーんして?」
「あーん……ん!カズが食べさせてくれたらもっと美味しくなった!」
「うふふ♡たくさん食べてね♡」
にこにこしながらあーんしてくれるカズは、もうすっかりいつも通りのカズで。
美味しいカレーと幸せを同時に噛み締める。
今後普段と違う料理が出てきた時は褒める前に要確認!とこっそり心に刻みつつ。
宇宙一美味しいカズのカレーを腹がはち切れそうになるまで堪能したのだった。