第22章 カレー騒動
「すねて可愛くない態度ばっか取っちゃって…こんな態度続けてたら翔ちゃんに嫌われちゃうって思ってこわくなったけど…でもどうしても胸の中のわだかまりが消えなくて…」
素直に謝れなかったと呟く声は震えてた。
背中にまわされた手にはぎゅっと力が入ってる。
俺の不用意な発言のせいでこんなに苦しめてしまったんだと、嫌でも分かってしまって胸が痛い。
でもカズは、今日1日ただオロオロしてただけの俺とは違った。
「だから智にカレーを習いに行ったの」
きっとどうしたらいいのかたくさん考えてくれたんだろう。
「1番を取り返してから謝ろうって決めたの」
カズはぐっと顔を上げてまっすぐに俺を見た。
さっきのやり取りはそれが達成出来たかの確認だったんだと、ようやく気付く。
よく分かってなかった俺はただ頷いただけ。
それでもカズは本当に嬉しそうだったけど、改めてちゃんと自分の言葉で伝えたいと思った。
もっとカズを笑顔にしたかった。
「カズが俺のために作ってくれたってだけでもう美味いに決まってるけど、でもそういうのを抜きにしてもこのカレーはマジでめちゃくちゃ美味いよ!俺の好みど真ん中の味!」
「今までで1番?」
「ぶっちぎりの1番!」
はっきり言い切れば、カズはさっきよりもっと嬉しそうに笑った。
「翔ちゃんの好みを誰よりも知ってるのは俺だもん」
得意げに胸を張る姿が可愛くて愛しくて堪らない。