第22章 カレー騒動
どうしていいか分からなくて、口を押えたまま途方にくれていたら。
「翔ちゃん」
カズに名前を呼ばれて反射的にビクッと肩が震えた。
でも…あれ…?
なんだかカズの声が柔らかいような?
気のせいかもしれない。
でもどうしても気になって。
そーっと顔を上げると、何故かカズは目をキラキラさせて俺を見ていた。
え?なに?
なんかめちゃくちゃ可愛い顔してるんだけど。
あれ?
怒ってないの?
今日は褒めてもいいの?
昨日はダメだったのに?
なんで???
予想外の展開に、頭の中で大量の疑問符がグルグル渦巻く。
でも俺の様子がおかしいことに気が付かないのか、カズはぐいっと身を乗り出してきて。
「このカレーおいしい?」
「うん」
「昨日のカレーよりおいしい?」
「うん」
ぐいぐい聞かれて、混乱した頭ではもうなんて答えるのが正解かなんて考えられなくて。
素直に頷いたらカズはめちゃくちゃ嬉しそうに笑った。
可愛い!可愛いけど、もう何が何だか…
「あのね、このカレー俺が作ったの!」
「え?」
「今日智に習いに行って、作ってきたんだよ!」
「は?」
「だからおいしいって言ってもらえて嬉しい♡」
カズはキャッキャと話を進めていくけど、俺はもう間の抜けた声しか出ない。
ちょっと一旦話を整理させてほしい…
えぇっと、カズが作ったって言ったよな?
智くんに習って?このカレーを?
いつもみたいに動いてくれない頭で必死に考える。
今日のカレーはカズが作ったカレー?
………ああ!
だから褒めても怒らなかったのか!