第22章 カレー騒動
-Mside-
会社帰りの最寄り駅、電車を降りてホームを歩いていたら前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。
「お疲れ、翔!」
小走りで追い付いて、そのまま後ろからガシッと肩を組んで。
「智のカレー食った?」
もし今日翔に会えたら聞こうと思ってたことを聞いてみた。
昨日智がニノにおすそ分けしたって言ってたから感想を聞きたかったんだよね。
今、智がカレー作りにハマってて。
それがめちゃくちゃ美味いんだけど、いかんせん一度に作る量が多い。毎回大鍋いっぱいに作るんだよ。
そして作ること自体にハマってるもんだから、頻度が高い。
いくら美味くてもさすがに飽きてきちゃって、冷凍庫の中もカレーだらけ。
そんな話を智がニノにしたところ、俺たちにも食べさせてよと言ってくれたみたいで。
喜んだ智が昨日張り切って鍋ごと届けに行ったってワケ。
智のカレーが美味いのは分かりきってるけど、やっぱり他の人の感想も聞きたいじゃん。
ついでに智の自慢もしたかった。
智すげーだろ、カレー作りの天才だろ、ってね。
いつも散々ノロケを聞いてやってんだから、たまにはいいだろ。
しかし、いくら待ってみても翔からの返事がない。
この距離で聞こえてないってことはないだろ?と首を傾げつつ。
「昨日カレーだったろ?……翔?」
再度尋ねながら何気なく覗き込んだ翔の顔を見てギョッとした。
今にも倒れそうな顔をしていたから。