第21章 幸せな日々
「ううう…」
しばらく抗ってみたけれど、その間もカズはずっとうるうるの目で俺を見ていて。
結局俺がカズに勝てるはずもなく。
「………分かった。カズが大変じゃないならお願いします」
「うん♡」
「でも俺にも手伝わせてください」
「うん、ありがと♡」
負けを認めて素直にお願いすれば、カズはにこにこと嬉しそうに笑った。
その可愛い笑顔に色んなことがどうでも良くなりかけて…
いや、ダメだと慌てて頭を振る。
「ちょっとでもしんどくなったら教えてね。楽しさと疲れは別物だと思うから。絶対1人で抱え込まないって約束してほしい」
「わかった、約束する」
我ながらしつこいと思うけど、これだけは譲れない。
真剣なトーンで念押ししたら、カズも真面目な顔で頷いてくれたんだけど。
「じゃあ、俺からもお願いをもう1ついい?」
その真面目な顔のまま聞かれて、一体何を言われるのかとちょっと緊張が走る。
何となく姿勢を正してから頷いた。
「大事なことだからもう1回言っておくけど、俺は翔ちゃんとの生活をとっても幸せだと思っているので、自分から手放したりしません。絶対にしません。なので、もう二度と疑わないって約束してください」
迫力ある敬語がやたら怖い。
でも淡々と詰められて、やっと気付いた。
カズがさっき怒った一番の理由はきっとこれだって。
カズはそんなこと一言も言ってないのに。
顔にも態度にも出したことなんてないのに。
勝手に出て行ってしまうんじゃないかって不安になった俺。
カズからしたら、突然身に覚えのない疑いをかけられて、大丈夫って言ってるのに信じてもらえなくて。
自分の想いを否定されたように感じたはずだ。
きっとすごく傷つけた。
そりゃあ怒るし泣きたくもなるだろう。
「約束します。カズの気持ちを疑うみたいなこと言って傷つけて本当にごめんなさい」
心から反省して深く深く頭を下げたら、カズにもちゃんと伝わったみたいで。
カズはにっこり笑って許してくれた。