第21章 幸せな日々
「だから仕事以外の時間は翔ちゃんと一緒にいたいの。翔ちゃんがせっかくプロから色々学ぼうとしてたのに、ワガママ言ってごめんね…」
カズの言葉に俺は嬉しくなる一方なのに、カズはちょっと冷静になったのかしょんぼりしてしまった。
はっきり言って、俺はそんな前向きな気持ちで習いに行きたかったわけじゃない。
カズのため…っていうか、そもそもはカズに出て行かれないためにっていう、そんな理由で言い出したことだ。
だからカズが気にすることなんて何もない。
「ワガママなんかじゃないよ!俺だってカズとずっと一緒に居たいと思ってるから嬉しいよ!」
「……ほんと?」
「本当!それにもしこれがワガママなんだとしても、こんな可愛いワガママなら大歓迎だし!」
少しでもカズの気持ちが軽くなるようにと力説していたら、カズの目がキラっと光った気がした。
「カズ?」
「じゃあもっとワガママ言う!」
「へ?」
突然の宣言についていけず間抜けな声を出す俺に、カズはうるうるの上目遣いを向けた。
「俺ね、翔ちゃんのためにご飯作ったり、ほかの家事したりしてるとさみしい気持ちがちょっと紛れるの。本当に無理とかしてないから、これからも俺にさせてほしい。翔ちゃんのことを考えながら、翔ちゃんのために動いてる時間も幸せだから」
うぅ…こんな可愛いこと言われたら、もう「無理しないで」とか「そんなに頑張らないでいいよ」とか言えないじゃん…