第21章 幸せな日々
「寂しい思いさせてることに気づけなくてごめんね」
カズの涙が止まって落ち着いてきた頃を見計らって改めて謝る。
俺はやっと一緒に暮らせるようになったことに浮かれきってて、まさかカズが寂しがってるなんてこれっぽっちも考えたことがなかった。
これは家事以前の問題だ。
大いに反省しなければならない。
でもカズはふるふると首を振った。
「翔ちゃんが知らないのは当たり前だよ、だって翔ちゃんと一緒にいる時はさみしくないもん」
「カズ…」
「俺だって今の生活は本当に楽しくて幸せだって思ってるんだよ。でも時々ふっと無性にさみしくなる時があるの…」
シュンとしたカズが言うには、仕事をしてる間は気にならないけど、休憩の時とかに家に1人でいることにさみしさを感じてしまうらしい。
「家中どこにいても翔ちゃんを感じるのに、翔ちゃん本人はいないんだもん」
口をとがらせて拗ねたような顔をするカズが可愛い。
俺は外に出て人と会ってるから気が紛れるけど、カズは俺以外の誰とも会わない生活だもんな…
そもそもカズが在宅ワークを選んだのも元を正せば俺のせいだから、やっぱり責任を感じてしまって。
「それは出社したら解消する?」
「しない」
そう聞いてみたけど、カズはキッパリと否定した。
「翔ちゃんがいないのがさみしいんだもん。他の誰かに会いたいわけじゃない」
申し訳ないと思ってるのに、その答えにまた嬉しくなってしまう。
どうしようもなくなった時は智のところに行ったりしてるけど…って、ぽそっと付け加えられたのはちょっと気になるところだけど。
まぁ、智くんなら仕方ないか。
どうしたってヤキモチは妬いてしまうけど。
カズが甘えられる智くんが近くにいてくれることに感謝しなきゃな。