第21章 幸せな日々
びっくりして口を噤んだ俺を、カズは今にも涙がこぼれ落ちそうなうるうるの瞳でキッと睨んだ。
「……社会人になって一緒に暮らせるようになったけど、学生の時より一緒にいられる時間は減ったよね?」
「え???」
あれ?料理教室の話は?
急な話題転換に全くついていけず、頭の中は?マークでいっぱいだ。
でも、正直カズが何で急に怒り出したのか理由が分からないから、下手なことを言ったら今以上に怒らせてしまうかもしれない。
それは避けたいから、とりあえず素直に聞かれたことについて考えることにした。
えーと、一緒にいる時間についてだよね。
確かに、同棲を始めて幸せいっぱいだけれど、朝から晩まで一緒に過ごせるのは休日だけ。
平日はお互い仕事があるから、朝と夜のわずかな時間しか一緒に居られない。
学生時代…特に高校の時は日中ずっと一緒に居られたから逆転した形だ。
今は寝る時も一緒だから時間の長さだけなら増えた気もするけど…
起きてる時間だけをカウントするなら、確かに2人の時間は減ったと思う。
でもカズが肯定してほしいのか否定してほしいのか分からないから。
「まぁ、減った…かも、ね?」
何となくあやふやに答えてみたけど、その返事はカズのお気に召さなかったらしい。
ますます不機嫌になってむぅっとほっぺたを膨らませてしまった。