第21章 幸せな日々
気づいたら会社の自分の席にいた。
正直いつ潤と別れて、どうやってここまで来たのか、全く記憶にない。
頭の中ではずっと、さっきの潤の言葉が繰り返されてて。
不安で不安で堪らない。
だって、カズの不満が爆発する日がもし今日だったら…?
どうしよう…
家に帰ってもカズがいなかったら…
カズのいない真っ暗な部屋。
ダイニングテーブルに残された書き置き。
そんなものを想像しただけで目の前が真っ暗になる。
それでも仕事は待ってくれない。
もちろんこんな私情でサボる訳にはいかないから、ちゃんとやるけど。
何度打ち払っても消えてくれない嫌な想像と戦いながらだったから、なんとか今日やるべきことを終わらせた頃にはヘロヘロになってた。
余程ひどい顔をしていたんだろう。
同僚たちには体調不良を疑われ、上司からも早く帰って休むよう言われてしまって。
気分が最悪なだけで体調が悪いわけではないから申し訳ないと思ったけど、今日ばかりは有難く早めに上がらせてもらうことにした。
いつもより早い時間の電車で家へと戻りながら、考えるのはやっぱりカズのこと。
そもそもカズが在宅で仕事をしてるのも、たぶん心配性な俺のためなんだ。
大学は同じだったけれど、学部は違った俺たち。
性格も違えば、得意なことも学びたいことも違ったから仕方ないんだけど。
本音を言えば、高校みたいにずーっと一緒にいたかった。
でも、親に高い学費を払ってもらって、学ぶために入った大学だ。
勉強よりカズを優先したいとか言えるわけない。
それに、自分の学びたいことを曲げてまでカズと一緒にいたところで、カズは喜ばない。
むしろ自分のせいで…と、気に病んでしまうだろう。
それじゃ本末転倒だ。